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2008年6月 9日 (月)

『一杯のカレーを求めて』

 昨夜私は考え事をしていたのだが、段々目が冴えてきて眠れなくなってしまった。何とか寝ようと頑張ったが目は冴えるばかりだった。その時、何かの弾みでふと空腹を感じた。すっかり忘れていたのだが、あまり夕食を食べないでしまったことまで思い出してしまった。道理で目が冴えてしまう訳だ。しかも、その夕食で好物のカレーライスを食べ損ねたことまで思い出してしまい、段々悔しくなってきた。
 「あぁ、カレー食べたかったな。お腹空いた。眠れない。」
とずっと同じようなことを考えているうちに、うっすらと空が明るくなり始めた。4時を回ったのだ。逆にここで寝てしまったら、仕事があるのに起きられなそうな気がした。それでも眠れそうなら一か八かで自分を信じて短時間睡眠に挑戦したかったが、目を閉じてみても一向に眠れそうになかった。それどころか、「カレーが食べたい」という思いばかりがどんどん強まってきてしまったのだ。
 悩んだがとうとう私は意を決した。
「よし、カレーを食べに出掛けるぞ。」
そして、むくりと寝床から起き上がって支度をした。
 夏至に近付きつつあり、日の出が早まっているとは言え、まだ4時を過ぎたばかりだ。家族も含め、静かな街をそっとしておいてあげたかったので自転車で行くことにした。目指すは駅のすぐ側のカレー屋だ。多分、大手チェーン店だから、24時間営業だろう。もし開いていなければ、どこか適当に他の24時間営業の店にでも入ろうと思った。

 玄関を出るとうっすら霧がかっていた。少し厚めの長袖を着たので暑いかなと思ったが、流石に外に出るとこの時間帯はまだ涼しく、自転車で風を切って走っていたので、尚更厚めくらいで丁度良かった。
 明るくなってきているとは言え、街並みが青紫色がかって見える程まだまだ空は薄暗く、鳥のさえずりが優しく聞こえてくる以外はほとんど物音らしい物音もなく、空気も澄んでいて仄(ほの)かに良い香りがするような気もした。今流行の言葉で言えば、マイナスイオンというやつかもしれない。田植えをしてから1ヶ月経った田圃の苗もだいぶしっかり根付き、緑色が鮮やかになってきている。こんな朝を車の排気ガスで汚すのは気が引けるというものだ。そんなことを感じながら、私は駅を目指して自転車を漕いだ。

 「流石にこれだけ朝早いと人っ子一人居ないなぁ」と思っていると、もう豆腐屋では仕込みを始めていた。更に、牛乳屋さんも何やら準備していた。いやはや、こんな朝早くから、それもきっと毎日のことなのだろうが、本当にご苦労様である。勿論、新聞配達員は言うまでもなく、この時間にはもうとっくに動き出している……と思いきや、「あれ?!そう言われてみると、絶対にどこからか聞こえてきて良い筈の配達員のバイクの音が、今日は全然聞こえないなぁ」と思った。
「はて、今日は休刊日だっけ?」と思いながら昨日見た新聞を頭の中で思い返してみると、「そう言えばテレビ欄は今日の分まで載っていたな」と思い出した。
「なるほど、休刊日だから余計に今日は静かな朝なのか。」
 更に走り続けていると、鶏小屋で鶏たちが威勢良く鳴いていた。
「まだ街は眠っているというのに、こんな早朝からそう張り切って騒ぐなよ」と思った。
車は時々走っていたが本当に数える程度であった。

 街並みを見て回りながらふと感覚的に思ったのだが、
「週末なら分かるが、平日の早朝から外食するような人なんてそんなに居なそうな気がする」と考え、24時間営業は有り難いことだが、あまり効率が良いとは言えない気がしないでもなかった。
牛丼屋やファミリーレストランが開いていたが、牛丼を食べたい気持ちではなかったし、早朝から1人でファミレスに入るのは何となく気が引ける。それに見た感じ、失礼ながら案の定お客さんが見当たらない。最終手段はこういう所に入ろうと思ったが、まずはカレー屋に行くことが先だった。「空腹だから」というよりは、「カレーが食べたい」という気持ちがこうした行動に走らせる原動力となっていたようなものだし。しかし、こういった客の入りが望めないような時間帯ですら、マックに限っては何人か居たのには感心した。だからと言って、ハンバーガーを食べたい気分でもなかった。腹は減っていたが、一番食べたかったのはカレーだった。

 この時間では流石に駅の周辺も閑散としていた。それでも、駅が近付くにつれ、サラリーマンらしき人を3人くらい見掛けた。遠くまで通勤しているのか、それとも出勤時間が早いのか分からないが、きっと毎日こんな時間に電車に乗るのだろう。本当にご苦労様だと思った。コンビニにも何人か居たようだった。
 駅に着いて目当てのカレー屋を見ると、電気がついていなかった。「チェーン店だから営業しているに違いない」という期待は外れた。でも、何となく閉まっているような気もしていたのですぐに気を取り直した。
「そう言えば、駅の反対側にも確か同じチェーン店があったんじゃなかったかな。折角だから行ってみるか。」
反対側に行くには踏切まで少し回り道しなければならないので面倒だったが、ここまで来てしまった以上、何となく引き下がれなくなってきていた。私はすぐにまた走り出した。

 苦労して駅の反対側に行くと、近くではカラスが1,2羽、ゴミを漁って散らかしていた。群がっている訳ではなかったが、カラスの鳴き声が少し離れた所からも聞こえてきた。そんなカラスに警戒しながらその横をサッと通って目当ての店に着いた。が、確かに高校生だった時分はカレー屋だった店が、いつの間にか違う料理屋に変わっていた。
「それもそうか、反対側に新規オープンしたから、こっち側は閉めたんだな。そうかなという気はしてたけど。でも、わざわざこっちまで回り込んできたのになぁ。ああ、カレーに拘りすぎたかなぁ。結局カレーは諦めるしかないのかなぁ。食べたかったなぁ。他にカレー屋で24時間営業している所なんて、ファミレス以外では…」とそこまで考えて、ピンと閃いた。
「そう言えば、“すき家”にカレーメニューあったよな。あそこなら24時間やっていた筈だ!」
以前一度そこで食べたことがあったし、今度はほぼ間違いなくカレーにありつけそうな確信があった。最初に気付けば良かったが、やっとここでそのことを思い出した。
「牛丼屋でカレーというのもちょっと変な話だが、カレーが食べられることに違いはない。よし、今度こそカレーを食べるぞ!」

 ずっと腹ぺこでサイクリングをしていたので実は結構ふらついていたが、最後の力を振り絞ってすき家を目指した。最早執念みたいだった。最初はカレーじゃなくても良いという気持ちで家を出たが、ここまで頑張ってしまったからこそ、もう半分意地みたいになってしまったような感じだった。
5時近くなってきて、少しずつだが街の人も起き出してきたようだった。それでもまだ十分早い時間なのだが。
 それにしても、やはり早朝は全てが清々しくて気持ちが良い。大人になるに従って、深夜へ深夜へと夜更かしすることで、ほとんどの人が寝静まった後に行動していることに一種の優越感さえ抱くようになってしまっていたような気がしてならないが、あれは体に負担が掛かり過ぎるし、生活のリズムも乱れてしまう。しかも、綺麗な星空を見られること以外は得る物もあまりないような気がする。しかし、逆に早朝、ほとんどの人が起き出す前に行動しているという優越感は、夜更かしのそれとは似ているようでいて実際は全然違うと感じた。

 早朝からカレーを追い求めているうちに、何だかんだで10km近くサイクリングしてしまった。家を出てから実に1時間近くが経過していた。
「たった一杯のカレーを食べるためにここまでするか」と我ながら思ったが、今度こそ私は念願のカレーにありつくことが出来たのだった。


☆★ヘルシオーレ!メモ★☆
・早朝サイクリング:トータルで大体9~10kmくらい。
・ジョギング:約19分、3km。走り出そうとしたら雨が降り出し、次第に強くなった。最低限フォームが乱れないように意識して走った。

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コメント

早朝から、カレーを求めて、必死で自転車を走らせる男爵くんの姿を想像すると、噴出してしまいました。
分かるけど、私はそこまでしない・・・若いんですねえ。

それでも最近、カレーを食べていない!
そうだ!一人暮らしになったら、一人分のカレーなんて作らないもん。
ああ、カレーカレー・・・
今日は私がカレーを追い求める気がする・・・

投稿: 笑 | 2008年6月10日 (火) 07時12分

コンビニでレトルト買ってきて食べたほうが早・・ゲフッ!!
す、すみませんでした・・・・

でも、カレー一つでこんなに動けて、しかもいい思いできるってのは、素晴らしい事だと思うよ。
早起きは三文のトク!ですね^^

投稿: 酔倒 | 2008年6月10日 (火) 22時59分

>笑さん
普通は私も無理して寝ますけどね。この前の早起き体験がなければ起きようって気にはならなかったと思います、あれの結構影響が大きかったです。それに逃したカレーは大きかったみたいです。
カレーのことばかり考えていたら、あの匂いが(きのせいですが)漂ってきてしまったもんで、もうどうにもこうにも食べたくなってしまったのです。
でも、お腹いっぱいになったら流石に眠くなりましたね。


>酔倒さん
今回はノンフィクション小説風に書いてみました(ただの日記と変わらないと言われても否定出来ませんが)。サイクリングしながらこんな感じで書こうって浮かんできて、でも冷静になってやっぱり書くのやめようかなって迷ったりもしたんですが、結局書いちゃいました(内容的にちょっと恥ずかしい)。

カレーが食べたくなった時に真っ先に浮かんだのが「C○C○○番屋」だったもので、コンビニのことは全く思い浮かびませんでしたね。それも一つの手でしたね。

投稿: メークイン男爵 | 2008年6月10日 (火) 23時44分

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