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2009年1月29日 (木)

導火線に火が付いた・3

中型車を運転して色んな課題をこなしていた時も、
普通車の感覚とはかなり違うことを強く感じていたが、
大型車はその中型車が可愛く思えるくらい桁違いだった。
全長は12メートルかそこらのトラックだったと思うが、
まず運転席が自分の目線くらいの高さにあるので、
運転席まで階段で上っていくような感覚であった。
本当に私がこんなでっかい車を運転出来るようになるのか
最初はちょっと足が竦(すく)みそうになった。
運転席に腰掛けるとかなり見渡せて気分は良いのだが、
後輪の位置がよく見えないこともあって分かり辛く、
車長などの感覚も把握するのに時間が掛かった。

ミッション車は車輌毎に変な癖が付いていたりするものだが、
2台ある大型教習車のうち1台は3速にシフトが入り辛く、
気持ちちょこっと左にずらし気味で入れると入り易いという、
ちょっと癖のあるシフトだったので、
ギアチェンジしようとしてもなかなか入ってくれないことが多く、
冷静に処理しようと努めていたものの
内心は惰力で走りながら結構焦っていたりした。

しかし、何と言っても厄介だったのは、
教習所のコースが旧法の大型車対応に設計されていたのか、
S字クランクや方向変換(後退)など
何をやるにしても道幅がいっぱいいっぱいであり、
ちょっとの操作のずれも許されないような状況だったことだ。
中型トラックなら多少の微調整(ごまかし)が可能なことも、
この大型トラックではかなり正確な運転技術を要求された。

「後退」では後ろのポールから50cm以内までバックして
停止しなければならないのだが、
中型車以上に運転席から後ろのあおりまでの距離が遠いため、
感覚的にはポールにぶつかるんじゃないかと思う程バックして
初めて40~50cmくらいの所まで下がれていたりするのだ。
また、バックする時に何回ハンドルを切ったか分からなくなり
どれくらい戻せば良いのか最後まで分かり兼ねた。
この辺は乗り慣れるしかないような気もする。

「隘路(あいろ)」は横幅がほぼピタピタの枠の中に、
上手に車体を直角方向に回して収めるというもので、
時計の針を3から12、もしくは9から12に起こすイメージで、
回す方の後輪を軸にして頭(運転席の方)を入れるのだが、
中型車の時は少し前後及び両脇の幅に余裕があったのだが、
大型車はそれが全くなく、ちょこっとハンドルを切りすぎたり、
切り始めのタイミングが少しでも早かったり遅かったりすると
全然うまく枠に入ってくれないのでかなり難しかった。
車体感覚を掴む良いトレーニングであることは間違いない。

他にも、教習所場内のカーブを曲がろうとすると、
後輪の脱輪を避けるためにはどうしても
多少頭がセンターラインの外へ飛び出すようにして
運転しなければならないので、
必ず対向車が来ていないことを確認しないといけないという、
大型車ゆえの教習所ルールが幾つか存在していた。

しかし、何故か中型の時からS字クランクだけは得意だった。
また、同じく脱輪したこともほとんどなかった。
確か、後退の時に後輪の2本並んでいるタイヤのうち、
外側のタイヤが縁石の外に出たことは一度あった気はするが。
(この場合、内側のタイヤが脱輪していなくても脱輪扱い)。
後に自分がうまくなってきてからのことだが、
まだ習い始めと思われる他の教習生が曲がろうとして、
前輪を両方とももろに思い切り脱輪させているのを見た時は
「車体感覚が掴めないでかなり苦労しているようだな」
と思ったものだ。

右左折時は内輪差を考えて相当前に頭を出してから
ハンドルを切らないと脱輪してしまうので、
これが普通車の感覚でつい早くハンドルを切りたくなるのを
じっと耐えなければならず慣れるまで苦労した。
特に、左側を常に意識することが大事なんだと思った。
左折時の内輪差や巻き込み防止確認もそうだし、
右にハンドルを切る場合も、
トラックはサイドミラーがかなり外に張り出しているので、
ぶつけないように気を付けなければならないのだ。
そういう大袈裟な運転に慣れてきたせいで、
自分の車を運転している時でも
脱輪の心配もないのに無駄に大回りしてしまうなど、
一時(いっとき)変な癖が付きそうになった程だ。


中型限定解除の時は路上には出なかったのだが、
大型ではきっちりと第2段階で路上教習を行った。
右左折時に車体が車幅以上に外に振られる
「オーバーハング」と呼ばれる現象は中型車でも起こるが、
大型車はその場で曲がると70cmくらい出っ張ったりする。
先述の「隘路」への侵入を行う時などが好例である。
これが教習所場内だけであればまだ良いのだが、
一般道の場合、例えば自分が右折しようとしている時に、
もし左の直進車線に車が近付いてきている場合は、
その車をやり過ごしてからハンドルを切り始めないと、
最悪の場合その横っ腹を抉(えぐ)ってしまうことになる。

また、更に同じ状況でそのまま曲がれたとして、
今度は曲がった先の道路の先頭車が
停止線より前に出て止まっていたりすると、
右の内輪差を考えてその分大回りしなければならないのだが、
しかし、思い切り大回りすれば解決するのかと言うと、
今度は左のサイドミラーが電柱や歩行者信号や
標識などにぶつかりそうになるので、
左右を意識しながらハンドルを回さなければならず、
大型車ドライバーは苦労しているんだなと感じた。

「何でこんな良い道が制限速度40km/hなの?」
と思うことも時々あったりすると思うが、
大型車で走ってみると道幅が狭かったりして、
それくらいに速度を落とさないと、
道端の標識や木の枝などにサイドミラーが
当たりそうになったりするものなのだ。
重ねるようだが大型車運転において、
走行中は常に左側の意識を高めることが重要なのだ。
たまに標識などがぶつけられて曲がったりしているが、
普通車で走っている分にはそういう苦労は分かり辛い。

最初は路上を走るのが何となく怖かった私だが、
法定最短教習時間で終わらさないと、
どんどん教習が追加されてお金も時間も掛かってしまうので、
確実に予定通りこなすため、毎回毎回が必死だった。
また予約を取る時も「間隔が空きすぎると体が感覚を忘れて
上達が遅そうな気がする」と考えてなるべく詰めたり、
「寝坊したり遅刻して教習を受け損なったら大変だ」と思って
かなり緊張が高まった状態で眠りに就いたりだとか、
そういう色んな心配が教習中常に私を支配し続けた。

それだけに、最後まで私を苦しめた「縦列駐車」をクリアし、
無事順調に大型免許まで取得し終えた時は、
「これでやっと解放される」という喜びが
心底沸き上がってきた。
わざと早朝に予約を入れたりして、
土日でも早起きしなければいけないような状況を自ら作り、
いつも気の抜けないような生活を送り続けたので、
精神的にも肉体的にも疲労はピークに達していたが、
一番の目標である大型免許の取得を達成出来た瞬間、
色んな圧力から心底解放された。

街中を走りながら大型トラックを見る度に、
「これからはこういう大きいトラックも乗れるんだな」と思い、
トラックを見る目が変わった。
けれども、免許を取ったからと言っても、
荷物を積んで走った訳じゃないし、
技術的にも基本的なことを教わったに過ぎず、
まだまだ足りない所だらけである。

とは言え、思っていた以上に悪い癖が付いていたと気付けて、
色々自分の運転を見直すきっかけになったことも良かった。
また、大型免許を持ったことで、
そういう車を運転している方たちの立場や気持ちも
ささやかながら理解出来るようになれたし、
免許が増えたことで気が大きくなるのかと思いきや、
逆に「折角時間とお金を掛けて取ったのだから
絶対に取り上げられる訳にはいかない」という
慎重で従順な気持ちになり、
基本に忠実で安全な運転を心掛けるようになれた。
これは思わぬ相乗効果だった。


早速、やっとの思いで取った大型免許を免許証に起こしに行き、
ワクワクしながら新たな勲章を示す印字の刻まれた
新しい免許証を受け取った私はちょっと拍子抜けした。
当たり前のことではあるが、あんなに苦労して教習を受け、
時間もお金も掛けて取得したのに、
単に所持免許の種類欄に「大型」という記載が増えただけで、
全ての苦労がたった2文字だけに凝縮されてしまい、
一抹の空しさを感じてしまったのも無理はなかった。
ましてや条件欄の所の「中型車は中型車(8t)に限る」
という一文がなくなったので尚更殺風景になってしまった。
090129




そして、教習中に何人かの教官に
「大型の後は他に何か取らないの?」
と言われた言葉が再び脳裏に浮かんできた。
その時は本当にその気は全然なかったのだが、
「折角教習所で正しい運転知識を体に染み込ませたのに、
このまま終わったらなんか勿体なくないか?」
という考えが俄かに沸き上がってきた。

急いで家に帰って教習料金や時間の一覧を調べてみた。
「ついでだからもう一踏ん張りして、
安くて教習時間が短めなものをもう少しやろうかな」
と思って見た所、大型特殊自動車免許に目が留まった。
一番安く、時間も最短で6時間とかなり手頃だった。
と言っても、10万円近くするのだが、
連続教習で受講すれば新たな入会金が免除になるため、
半額くらいに抑えられる計算だった。
そう考えると入会金が如何に高いのかが分かる。

はっきり言って、仕事で使う機会は当面なさそうだったので、
「必要もない免許を取得する意味があるのか」
という自問自答は相当繰り返した。
それに当初の目的の大型免許取得も果たせた訳だし、
「もう教習所とはおさらばするつもりで
清々しく卒業してきたのにまた戻るのもなぁ」とも思った。
相当悩んだが、父に相談したところ勧められはしなかったが、
「持っていればそれは個人の財産だから邪魔にはならないよ」
と言われた言葉が最後は決め手となり、
再び教習所へと向かうこととなった。

かくして、「事のついで」というつもりで
大特免許の教習を受けることにした。

(つづく)

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コメント

闘う気をなくした葵ではありませんけど。(爆)

大型トラックが脇を通り過ぎていくとき、こちらもすごく緊張します。
それでも運転手さんたちはたくみに運転されますよね。
男爵くんも運転技術を磨いてください。
いつか「おお!男爵くんが!」と大型トラックを見て叫ぶ日が来るでしょうか。(笑)

投稿: 葵 | 2009年1月30日 (金) 07時06分

大型特殊って、どんな車を運転するための免許なんですか?
クレーン車とか?

投稿: 笑 | 2009年2月 2日 (月) 19時44分

>葵さん&笑さん
お返事が遅くなりました。すみません。

大型トラックと擦れ違う時や3車線とかで間に挟まれてしまった時などは威圧感がありますよね。

時々乗れれば良いんですがペーパーになっちゃうかもしれませんね。でもま、あの日々が幻になることはないです。


大特免許に関してはこの次書くつもりだったのですが、ここでお答えしますか?
いえ、やはりまた引っ張っておきましょう

投稿: メークイン男爵 | 2009年2月 3日 (火) 01時29分

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