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2019年11月の2件の記事

2019年11月28日 (木)

僅差

J2リーグ戦が終盤に近付くにつれ、毎週末が一層待ち遠しくなっていったが、特に最後の1週間は毎日毎日最終節のことばかり考えていた。
まるで、「まだまだ水戸は挑戦者だ」という謙虚な気持ちを思い出させようとするかのように、最終節目前でプレーオフ圏外へ弾き出されたものの、長らく現実味のなかったJ1昇格のチャンスが、もう現実的に掴めそうな所まで来ている。他力も必要でやや難易度は高いが、数字上も十分に逆転できる状況だ。クラブも歴史を塗り替えようと一丸となって、この1週間は今まで以上に懸命にこの一戦を盛り上げようとしているのが伝わってきた。

そして決戦の2日前には、仕上げとばかりに緊急会見を行った。クラブが向こう5年での民設民営での新スタジアム建設、アカデミー拠点の設立構想を発表したのだ。これまでの行政のバックアップを前提とした、既存の競技場をJ1基準を満たすように改修する計画とは全く違うアプローチの、実に大きな構想であった。
財力や親会社のない地方の市民クラブにとって、無謀とも捉えられかねないが、街を活性化するため、地域のシンボルとなるため、本気で地域に根差した存在に成長したいという、クラブの将来を見据えた熱く強い決意表明だった。

実際、条件付きJ1ライセンスを認めてもらっているものの、苦肉の策の「笠松運動公園陸上競技場改修・使用」では、晴れて水戸にホームスタジアムを構えられ、少しずつだが市民の関心を集め、年々観客動員を増やしてきた流れに逆行しかねない。しかし、その観客動員数もまだまだJ1レベルには程遠い。
また、サッカーの魅力がもっと身近に伝わる専用スタジアム建設を熱望する声は今に始まった話ではない。陸上競技場の座席増設の改修計画も勿論J1ライセンス取得のために有り難いことなのだが、陸上トラックがある分どうしても客席からの迫力が半減するため、陸上競技場がホームのサポーターが初めてサッカー専用スタジアムで観戦した後は、皆決まってその迫力と羨ましさを口にする程だ。

とは言え、大金を使って、成功するかどうかも分からないことに先行投資するのは、相当の覚悟や大きな希望がなければ難しい時代になった。うまくいかなければたちまち「見通しが甘かった」だの「無駄遣い」だのと揶揄される。今回のクラブの一大発表はつまり、それだけ本気で「強豪クラブに生まれ変わるために舵を切ります」と宣言したに等しい。

今季掲げてきた「一体感」が一層強まっていく気配を感じた。当日の予報が雨かもしれないと知ったところで、現地で選手達を声で直接後押ししたいという気持ちが揺らぐことはなかった。それは私に限ったことではなかったようで、待ちに待った当日、生憎の天候にも拘わらず8500人を超えるサポーターが歴史的瞬間の証人となるべくKsスタに集結した。シーズン当初に年間観客動員125,000人の目標を掲げた時は「随分大きく出たな」と思ったし、残り5試合を切ってきた辺りでも、「流石に達成は困難か」と思うようなペースであったが、そこから怒濤の追い上げで、最終節ではまるでピン側のパットを沈めるように余裕を持って目標を達成した上、初の年間平均6,000人超えをも記録した。

私自身、今季はスタジアムに足を運べても、諸事情で思い切って応援出来ずにいたが、最後は久し振りにバックスタンドで全力で応援しようと決めていた。全力応援のため、サポーターミーティングや選手バス到着待ちなど、試合前のイベントは全て参加した。それら全てが懐かしかったと同時に、熱いサポーターがこの数年で相当増えたのも実感出来た。選手入場時はコレオグラフィの一端を担っていたので、ピッチがどうなっているか全く見えなかったが、メッセージが選手やメインスタンドで見ているサポーター達に伝わるよう全力で掲げた。

程なくして、25周年記念ユニフォームを纏ったイレブンがピッチに散らばり試合が始まった。
ライバルチームの動向も気になるが、まずは水戸が勝たないことには何も始まらない。同時刻キックオフの他会場の結果はなるべく気にせず、まずは目の前の試合に集中するスタンスを取った。前半で先制しリード出来れば、他会場にもプレッシャーを掛けられる。そんな状況で試合が出来ているだけで感極まりそうになった。そして、前半42分という理想的なタイミングで先制点を挙げてハーフタイムを迎えた。

他会場の経過もここで初めて一応確認した。0-0の山形が暫定で勝ち点71の6位となっており、水戸は暫定勝ち点70の7位に浮上していたが、このまま試合が終わってしまうとプレーオフには届かない状況であった。しかし、確実にスコアが変動するであろう後半のことを、この時点であれこれ試算しても無意味だと分かっていたので、「水戸は水戸でこのまま勝利を目指すだけ」「対戦相手チームの奮起を信じる」と、特に焦りもなくそれ以上のことは何も考えなかった。

いよいよ運命の後半が始まった。相変わらず時々ゴール前でチャンスは作るもののなかなか追加点が生まれない。逆に受けに回る時間帯も続いた。リードはたったの1点。前掛かりになって裏を取られるリスクを抑えるためか、強引に攻め上がる場面は少なく、まずはしっかり守る意識を持っているようにも見えた。確かにもし一瞬で同点に追いつかれでもしたら、今度こそ崖っぷちに追い込まれかねない。

果たして今水戸が暫定でプレーオフ圏内に入れているのかいないのか、私には分からなかったが、ピッチに声援を送りながらふと、「プレッシャーのある中でこうも懸命に『水戸の誇りを胸に』戦っている選手達の努力や想いが報われず、『プレーオフに惜しくも届かずシーズン終了』なんて結末には絶対させてなるものか。絶対に俺たちが次のステージに進むんだ」と思ったら、チャントの歌詞と相俟って、歌いながら何度も感極まってしまった。まだ何も成し遂げておらず、「感傷に耽っている場合じゃない」とは思ったが、応援し始めた頃からのいろんな情景や、サポーターとして肩身が狭かったり悔しい思いをした日々のことが瞼に思い浮かんできた。

そうしている間にも時計の針はどんどん進んでいった。周りからは他会場の結果を逐一チェックし呟く声が否応なしに聞こえてくる。
と、その時だ。「お!行ける!逆転した。てことは、えーと…あと1点だ!あと1点取れば、プレーオフ行けるぞ!!」と誰かが叫んだ。どのチームがどうなったのか分からないものの、得失点差の勝負になったことだけははっきり分かった。そして、もう1点取れなければこのまま終わってしまうということも―。
まもなくアディショナルタイムに入ろうかという時間帯だった。

アディショナルタイムの目安はたった3分。相手も勝ち点を是が非でも取りに来る執念を見せ、セットプレーでGKも水戸のゴール前まで上がってきた。
ボールがこぼれて水戸が前に蹴ろうとするが跳ね返されプレーが続く。相手GKも失点のリスクも顧みずそのまま前線でプレーを続けている。ハーフラインから後ろがほぼガラ空き。「誰か何でも良いから思い切ってロングシュート狙ってくれ!」
コールこそ起きなかったが、皆頭の中では「あと1点」コールがぐるぐる鳴り響いていたことだろう。だがボールが出て来ないばかりか、逆にシュートを打たれる。それをGK松井選手が落ち着いてキャッチ。がっちり掴んだまま地面に倒れ込んでキープ。リードしてるチームがこの時間帯によくやるやつだ。
「『よし!』って違う違う!いつもはそれで良いけど、今の状況は1秒でも早く前にボールを蹴って、GKが自陣に戻る前にガラ空きのゴールを狙うことなんだって!」というみんなの心の総ツッコミの声が聞こえてくるような瞬間だった。
「この動きはもしかして、このまま1-0で勝てばOKと勘違いしているんじゃないか!?」
そう思ってピッチ上の選手達を見ると、心なしか必死で追加点を取りに行こうとする雰囲気ではないようにも見えた。

「急げ!!あと1点取らなきゃこのままじゃプレーオフ行けないよ!」
こんな誰かの悲痛な叫びが聞こえたような気のせいか分からないが、何回かゴール前まで攻め上がる最後の猛攻を見せたが、既にゴールガラ空きサービスタイムは終了していた。それでも「そこでシュートが打てれば」という場面はあったが、時間は残されておらず、無情にも試合終了のホイッスルが吹かれた。
その瞬間は勝利したことに純粋に歓喜する一部のサポーターから「ワッ」と歓声も上がったが、大多数は「あぁ」と何とも言えない複雑な反応だった。勝利だけを見に来たのではなく、その先のプレーオフ進出を本気で目指していたからこそ、大半のサポーターが状況を理解していた。
しかし、すぐにまた近くの誰かが呟いた。「まだ(対象チームの)試合は終わってない。まだ分からない!もう1点取ってくれれば…」
最早そこに一縷の望みを託すしかなかった。そこでようやく私も速報を確認した。まだ試合中の山形と勝ち点、得失点差とも並んでいた。それを、中には勘違いして、「同率」と思って喜ぶ方の声も聞こえるなど少なからずスタンドも混乱していたが、40節終了時に山形と並んで4位タイになった時、私はその辺りの順位付けルールはしっかりと確認したので、冷静に山形の総得点の方が多いことも確認し、そうこうしているうちに試合が終了し、万事休す。
スタジアムは更に暗い空気に包まれた。決して重苦しくはなかったが、せっかく試合に勝ったのに、頑張った選手達を讃えたいのに、彼らに申し訳ないと思いながらも素直に喜べない状況は初めての経験だった。

「終わってしまった。」
最終順位が確定した時、選手もサポーターも多分みんなそういう想いだったと思う。
試合前に思い描いていた初のプレーオフ進出を果たすことなく、この瞬間、今シーズンがこんな形で突然終了した。
今まで味わったことのない感情を最初から最後まで経験させてもらえた一戦だった。ちなみに後から知ったことだが、ホーム通算150勝目でもあったらしい。
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6位となった山形には勝ち点、得失点差とも追いついたが、総得点の差で無念の7位フィニッシュとなった。もしこれが無理して攻め込んだ結果、同点に追いつかれて勝ち点68で終わっていれば、結果は同じ7位だったとしても、「6位とは僅か勝ち点2差だった」と諦めもついたのだろうか。
最終節の途中までは確かに他力も必要だったが、山形が勝ち越しゴールを許してからの数分間に限っては、水戸がもう1点取っていれば、結果的に自力で逆転出来ていた。たった1点に泣いた。シーズンのどこかで1点多く取っているか、余計な失点を1つでも防げていれば最高の瞬間を迎えられていたのだ。でも、その1点で、実際は負けが引き分けに、引き分けが勝利になっていたり、逆に勝ちが引き分けに、引き分けが負けになっていたりする訳で、勝ち点自体も変わっていた可能性が高い。毎年ドラマが生まれるプレーオフ争いの1点の重みに泣いた今年のチームは、我が水戸だった。本当に僅差だった。
しかし、一方で「最終戦の前には最低限、プレーオフ進出はほぼ決まりかけの状況には居ないと、やっぱり厳しいのかな」とも思った。それに、6位以内に入っても現実的にこの後3試合を勝ち抜かねばならない厳しい戦いに挑まねばならなかったことを思えば、理想を言えばやはり自動昇格枠で行くつもりでないと厳しいだろうなと。そうは言っても、どんな形でも行けるなら行ってみたかったが。

ちなみに、何かに付けて「22チーム制になってから最高の」と成績に前置きが入るのは、18チームで51試合行われた2009年に、水戸は21勝10分け20敗で勝ち点73の成績を収めたからで、実際今でも印象深い強いチームだったし、J2参入後勝ち越せたのも昨季までは唯一この年だけであった。今季の記録にもやはりこの接頭辞が付いてしまうが、9試合も違うのにほぼ近い数字を残したのだから、如何に今季が過去最高だったかが分かる。7位については、チーム数に拘わらずJ2参入後過去最高である。

今季の水戸は連敗は1度だけだったが、3連勝も開幕からの1度だけで、開幕12戦無敗や夏に7戦無敗もあり、シーズンのほとんどを6位以上で過ごしたものの大型連勝がなかった。その点、1位の柏は中盤で11連勝したし、2位の横浜FCも18戦無敗、4位の徳島も12戦無敗などを中盤から終盤に掛けてそれぞれ達成し、最終的な明暗を分けた。水戸もそれに準ずる活躍はしたが、やはり勝負所で勝ち点を失った数試合が最後に効いてしまった感じがする。J2で2番目に失点が少ない堅守で勝負してきた故に、総得点差というルールで憂き目にあったとも言えるかもしれない。そう考えると攻撃的なチームの方が有利なようでフェアじゃない気もする。
しかしいずれにしても、シーズン通して昇格争いが出来たこと、そして1点に泣かされたことで、間違いなく今後新たな歴史を創る上で必要な経験をさせてもらえた。そんなチームを改めて誇らしく思う。悔しい気持ちはあるが、本当に毎週楽しみなシーズンだった。みんなにお疲れ様と言いたい。

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2019年11月16日 (土)

J1参入プレーオフ初進出の可能性を残して最終節へ

この1ヶ月半の間もJ1昇格争いはもつれたまま最終盤に突入したが、1節を残して柏がまずJ1復帰とJ2優勝を決めた。更に、残り1枠の自動昇格枠争いも横浜FCと大宮の2チームに絞られた。3位もこのどちらかとなる。
J1参入プレーオフ出場権が与えられる3~6位のうち、残り3枠については、4位の山形から8位の水戸までの実質5チームの争いとなった。
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前節終了(残り2節)時点で4位タイに浮上し、数字上は自動昇格の可能性さえも残っていた水戸。自動昇格は実質厳しいとしても、今節勝ってプレーオフ進出に王手を掛けておきたかったが、敗れた上に他のライバルチームは全て勝利という最悪の結果となり、一転してプレーオフ圏外の8位まで転落し、最終節も他力に委ねるしかない厳しい状況に追い込まれた。
負けた時点で9位が確定し、引き分けても6位に食い込める可能性はほぼゼロに近い。つまり勝つしかない。勝っても複数の条件をクリアしならなければならない。しかし、ここに来て手堅く勝ち点を積み重ねているライバル達が取りこぼすとも思えない・・・。
最新の順位表を何度も見返しては、今日勝ち点3を獲れなかったことで陥った窮地に、ネガティブな言葉が次々浮かんで来た。
だが、不利な状況に違いはないが敢えてポジティブに考えてみようと思い直した。それこそ、皆が言う通り、「諦めるにはまだ早い」と―。

ライバルの3チーム以上が勝利すれば勿論アウトだが、引き分けや負けが絡んでくればまだ分からない。それこそ、今節の水戸のように4位から8位への転落も有り得るのだし、何なら8位から4位への浮上だって可能性としては有り得る。それに、3試合制さないとJ1昇格出来ないプレーオフを有利に進めるためにも、一つでも上の順位でフィニッシュしたい思惑はどのチームも持っていて、プレッシャーも少なからず掛かっているはずだし、まずはどのチームも「他のチームがどうこうではなく勝つことに専念する」という気持ちで最終戦に臨むはずだ。
そこに付け入る隙が出る可能性は十分ある。そういう意味では、「展開次第では引き分けでもプレーオフ進出が決定する」というような中途半端な立ち位置よりも、「もう勝つしかない」という潔い立場の水戸の方が迷いなく臨めるかも知れない。

今シーズン序盤の水戸は堅守が持ち味だったが最近は失点が止まらず、10月以降の7試合で2度の逆転負けを含め、勝ち点10しか伸ばせなかった。やはりJ2は一筋縄ではいかないと痛感した。それでも初の昇格へ向けて産みの苦しみを味わいながらも未踏の地を進み続けた。そうして、初めて最終節までプレーオフ出場の可能性を残すという、クラブ史に大きな経験と足跡を残した。

でもまだここで終わって欲しくない。プレーオフに出場すること、トーナメントを勝ち抜いてJ1昇格すること、そしてJ1でシーズンを通して戦うことまで含めた経験がどんなものなのか味わいたい。経験して初めて見える景色があるはず。
水戸というクラブが過去25年で成し得なかった歴史を新たに塗り替えていくためにも、最終節での逆転劇をサポーターが信じ、選手達を全力で後押しするのだ。
多分これは計算や理屈じゃない。毎年最終戦での逆転劇や、勝ち点1や得失点差1の僅差でドラマが生まれているJリーグの昇格・降格争い。今年のJ2の昇格争いもそういう展開になるだろう。「絶対に諦めない」という強い気持ちを持ったチームが勝ち残る。

―こんな風に冷静に考えていたら、当初の悲壮感など全く必要ないことに気付いた。
いよいよ来週、運命を分けるレギュラーシーズン最後の1試合が行われる。

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